テーパー・キー溝加工まで“1台”で|船舶用ラダー(舵部)製造専用のオリジナルマシン開発
そもそも「船舶用ラダー」とは?
船舶用ラダーとは、船の操縦装置の一部で進行方向を制御するための”舵(かじ)”の総称です。
ラダーの基本的な構造は、船尾にヒンジで取り付けられた平面状のシートになっており、流体力学的に水の抵抗を最小限に抑えるように設計されています。
ラダーの固定部(テーパーシャフト穴形状)のしくみ
▲ラダー部の加工イメージ
ラダーは激しい水流・水圧に耐えながらも船尾から外れない作りが求められる。また、軸に対して回転方向にズレが生じないよう、テーパーによる摩擦結合に加えてキーによる回転ズレに対する拘束がなされる。従って、船舶用ラダーには「テーパー穴加工+内径キー溝加工」が求められる。
テーパー穴加工とはワークを円錐状に先細に中ぐり加工する方法で、上図のように先端が細くなっており、挿入するシャフトが穴に食い込むことで、強い摩擦力が発生して抜けにくく、また、振動による緩みが生じにくい。
また、”キー”と呼ばれる機械要素を加えることで、シャフトとの回転ズレを防止することを可能にしています。
▲ラダー部の拡大図(「テーパー加工+キー溝加工」で回転ズレを防止)
かつては、ラダー加工を「職人が手作業」で行っていた
「船舶部品の一部」といっても、ラダーは写真のような大型ワーク(約12m×10m)です。
かつてはこれを職人が、1カ月ほどかけて手作業で加工していましたが、生産性の向上や作業工数の削減といった観点から、近年ではほとんど加工マシンによる自動化へと置き換わっています。
【課題】複数マシンの導入+搬入・移動コストが大きい
先に解説した通り、ラダー製造ではテーパー加工やキー溝加工をはじめ、フェーシング・バックフェーシング加工など、さまざまな加工方法によって固着精度を高めなければなりません。
そのため各加工を可能にする「専用マシン」の導入が必須ですが、加工内容に見合ったマシンを複数台並べて加工しようとすると、ワークそのものが大型なため、マシン間を移動させることが困難という課題がありました。
つまりラダー製造においては、どうにか1台のマシンですべての加工を完結させる必要があります。
山科精器の「横型CNCフェーシング加工機」は、
全9パターンの加工を1台で!
上記のような船舶部品の製造課題を解決すべく開発されたのが、常石鉄工様と当社山科精器との共同開発で生まれたオリジナルマシン「横型CNCフェーシング加工機」です。
横型CNCフェーシング加工機は、当社のフェーシングマシン「FLEX U+」をベースにしたオリジナルモデルで、6種の付属ヘッドによって、船舶用ラダー製造に不可欠なテーパー加工やキー溝加工など、全9パターンの加工方法に対応。
本マシンをワーク付近に持ち運んで設置すれば、1台でラダー製造に不可欠な【全9種】の加工をすべて完結できるようにしました。
▲口径・加工方法にあわせた「全6種」の付属ヘッド
「横型CNCフェーシング加工機」の対応加工パターン
①:ボーリング加工
②:テーパーボーリング加工
③:フェーシング加工
④:バックフェーシング加工
⑤:内径キー溝加工
⑥:穴あけ・タップ加工
⑦:ポリシング加工
⑧:大径フェーシング加工
⑨:大径内ネジ加工
ワークに合わせたマシン開発なら、山科精器にお任せください!
当社ではお客様の加工するワーク(部品)ごとに生まれる“課題”をもとに、オリジナルマシンの設計・開発を行っております。
また本記事で紹介した「横型CNCフェーシング加工機」は、全国の造船所における“業界トップシェアの実績”もございますので、導入に関する些細なご質問も、ぜひお気軽にご相談ください。
- サイクルタイムを短縮して、生産量を増やしたい
- 1製品あたりに必要な「工数」を減らしたい
- 加工だけでなく、搬入〜搬出の手間も踏まえて改善したい
上記のようなお悩みをお持ちの企業様は、山科精器にお任せください。
この記事を書いた人
山科精器(株)ビジネスソリューション
山科精器(株)のマーケティング部門、営業部門の機能を有するセクションです。ファクトリーオートメーションや工作機械の分野で豆知識などの情報発信。お困りごとがございましたら是非ご相談承ります。