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油圧シリンダーの製造課題に向き合う|お客様の声から生まれた“オリジナルマシン”誕生背景について

モノづくりを支える「シリンダー」

産業におけるシリンダーとは、圧力を利用して直線運動を生み出す機械のことで、一般的に円筒形の筐体内に圧力を加えることで、ピストンが往復運動し、直線運動が生み出される仕組みになっています。

動作はパスカルの原理に基づいており、圧力を大きな力に変換することができることから、搬送やクランプ、押し引き、持ち上げなど、産業機械や自動化システムなど、さまざまな用途で利用されています。近年では、駆動源を電気モーターに置き変えた電動シリンダーも普及しています。

たとえば、クレーン車や産業用ロボットにおける「アームの動き」をコントロールしたり、金属加工機(プレス機)による成形において、材料を型に押し付けるための力を生み出すなど、幅広く活用されています。

用途ごとに種類もさまざま

電動シリンダー

電動シリンダーは、電気モーターの回転を直線運動に変換する仕組みで、高精度な位置決めや速度、推力の制御が可能です。

特に、位置決め精度が重要な搬送工程や、ソフトクランプが必要な組立工程、推力や速度の細かな制御が求められる圧入工程などで活躍しています。

エアシリンダー

エアシリンダーは、その名の通り「エア(圧縮空気)」を動力源としており、軽量でコンパクト、高速動作が可能という特徴があります。

構造がシンプルで、特に2点間の高速搬送や、クランプ、押し引きなどの単純な動作で利用されています。

油圧シリンダー

油圧シリンダーは、シリンダー内部に充填される流体(工業油)への加圧により、ロッドが伸縮するためのエネルギーを生み出しています。

また油圧シリンダーは高い出力と精密な制御が可能なため、大きな力が必要な場面や、重量物の搬送、クレーンの昇降、プレス機械などに採用されています。

より高推力を生み出す「油圧シリンダー」が産業の主軸に

製鉄機械や産業機械、工作機械などでは、より高い推力や精密な制御が求められるため「油圧シリンダー」が採用されることが一般的です。

一方で油圧シリンダーは、内部から油漏れしないように精密な加工が必要とされます。そのため、必然的に製品を製造するためのサイクルタイムが増加してしまうことが、製造工程の課題となっていました。

その理由と原因について、以下で詳しく解説します。

シリンダー製造における最大の課題点

上でも触れた通り、シリンダー製造には未だ大きな課題が残っています。

というのも、加工工程は、基本的に「旋盤加工(刃物は固定のまま、ワークを回す加工)」による切削が主流ですが、シリンダーのような長尺のワークは、主軸を高速回転させてしまうと、振動によりうまく加工できなかったり、遠心力でワークが歪んでしまう、といった問題があります。

そのため、加工時はワークを低速でゆっくり回転させるしかなく、結果として1本あたりの加工サイクルタイムが長くなってしまうという課題があるのです。

山科精器の解決策は、
ワークを回さない「フェーシング加工」技術の採用

これらの問題を解決するため、当社で研究・開発を行ったのが、ワークは固定したまま“刃物”を回転させる「フェーシング加工」技術を採用したオリジナルマシンの設計です。

本機の開発は、お客様からの『精度はもちろん、サイクルタイム短縮、さまざまな口径幅にも対応したい』というご相談が背景にあり、それを解決するために当社で設計を行ったのが、長尺ワークを回さず加工できる、当社フェーシング加工機(CNCフェーシング加工機FLEX U+DIA200)をベースとしたマシンの設計でした。

「2ポッド式フェーシング」採用で、さまざまな口径幅にも対応可能に!

本機の開発は、油圧シリンダーを製造・利用されるお客様からのお悩みがベースとなっており、その際にいただいたご要望は以下の通り。

  • 製造におけるサイクルタイムを短くしたい
  • さまざまな口径幅に対応したい
  • 内径を基準にして加工したい

これらのお悩みに対して、以下のシステムを搭載したオリジナルマシンとして設計しました。

マシンに搭載したシステム

  • サイクルタイムの短縮 ⇒ ワークを回転させない「フェーシング加工」方式を採用!
  • 口径幅への対応 ⇒ 「2ポッド式」の採用で、U軸の可動域を大幅拡大!
  • 内径基準の加工 ⇒ 「タッチプローブ」で“内径中心を把握して”加工可能に!

「タッチプローブ」とは?

▲イメージ:外径中心(青)ではなく、内径を測定し、内径中心(赤)へスライドユニットを移動

加工前のワークは必ずしも、外径と内径の中心が一致しているわけではありません。たとえばワークの内径加工を行う際、外径をクランプしたのみで加工すると、内径中心からずれているので、真円に仕上がりません。

内外径の芯ずれがあり且つ、内径加工をする場合は、内径の中心を基準として加工することで、仕上がりを真円にすることが可能になります。

今回、当社が開発したオリジナルマシンでは、加工に必要な基準を出すために、測定する「タッチプローブ」と呼ばれるセンサーを搭載することで、サイクルタイムの短縮だけでなく、シリンダーのような内径を基準にしての加工が求められるワークにも対応できるよう設計しました。

詳しくは下記製品ページをご覧ください。

関連ページ:『シリンダーチューブ端面加工用 対向500型2ポッド式CNCフェーシング加工機

ワークに合わせたマシン開発なら、山科精器にお任せください!

本記事で紹介したように、当社ではお客様の製造するワークごとに生まれる“課題感”をもとに、オリジナルマシンの設計・開発を行っております。

  • サイクルタイムを短縮して、生産量を増やしたい
  • 1製品あたりに必要な「担当人数」を減らしたい
  • 加工だけでなく、搬入〜搬出の手間も踏まえて改善したい

上記のようにお悩みの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

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山科精器(株)ビジネスソリューション

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