製品情報

技術情報

洗浄と吸引を両立させた内視鏡用カテーテル

医工産学連携を活用した新規事業参入

異分野への挑戦は1996年に立命館大学との連携によりMEMSと呼ばれる微細加工技術に関する研究を開始したことから始まる。2004 年から研究拠点を同大学内のベンチャー育成施設内に移すとともに、MEMS技術を応用した医療機器の研究開発を始めた。滋賀県が主管する文部科学省の地域振興に関する事業や科学技術振興機構(JST)の委託事業へ参画し滋賀医科大学や立命館大学と「吸引嘴管(しかん)」や「内視鏡用マイクロ波鉗子(かんし)」「遠心分離装置」などの開発を進めた。
また、大阪商工会議所が主催する「次世代医療システム産業化フォーラム」*1に参加して開発案件を探索した。大阪大学臨床医工学融合研究教育センター次世代内視鏡治療学共同研究部門の中島清一特任教授は、このフォーラムを通じて「プロジェクトENGINE」を立ち上げ、弊社とも「内視鏡用洗浄吸引カテーテル(以下「本製品」)」などを共同開発するに至った。
異分野領域において、将来性のある開発案件を独自に探し出すことは極めて難しい。弊社は大学と連携して、国の施策を活用しながら研究開発を進めた。その利点として、ドクターニーズにマッチした研究開発、経済的な経営リスクの低減、開発計画と実績の明確化などが挙げられる。
*1 このフォーラムは、マッチングを希望する大学研究者と企業とが連携する機会を提供する。

内視鏡用洗浄吸引カテーテル(エンドシャワー)
  • 本製品は、消化器内視鏡と共に使用され、消化管腔内の洗浄・吸引・色素散布などができる内視鏡用処置具(図1)である。先端付近の24個の側孔から液体を噴射あるいは吸引することで、効率的な洗浄と粘膜組織に愛護的な吸引ができる。
    従来、洗浄や吸引は内視鏡のレンズ面に設けられた専用孔を通じて行われてきたため、①スコープの向きを頻繁に調節・変更しないと洗いムラが生じる②レンズ面が汚液と接触して視野が失われる③誤吸引を起こしやすい、といった課題があった(図2左)。
    本製品は、洗浄と吸引機能を内視鏡本体から独立させて集約しており、次のような画期的な特徴を有する(図2右)。

    1.
    液体を全周性に側方噴射するため、広範囲を効率良く洗浄できる
    2.
    レンズ面から離して使用するため、操作時も内視鏡の視野が確保される
    3.
    微細多孔により圧力が分散されるため、組織を誤吸引しない
  •     図1 内視鏡用洗浄吸引カテーテルの概要
        図2 既存法と本製品の比較
  • 本製品を使用することで、より質の高い内視鏡診断、安全・迅速・低侵襲な内視鏡的治療の 実現を目指している。
    本製品は、外科的手術の利便性を内科的手術へ応用するという発想の下に、NOTES(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)で必要となる器具として発案された。開発当初は、実用的な性能を模索するために試作と検証を繰り返した。試作は弊社のコア技術である切削加工を、量産はコストと品質を考慮して樹脂成形を選択した。ベーシックなモデル(写真1)は2013年5月に発売し、今後はバリエーション展開と合わせて、より付加価値の高い機能を備えたモデルも発売する。

  •     写真1 ベーシックなモデル(2013年5月発売)
市場への投入と販売戦略

本製品は、2013年5月の医学系学会での併設展示を機に国内での販売を始めた。希望販売価格は3千円で、医療機関へは全国の販売会社を通じて納められる。弊社は、ドクターへのPRに加えて、販売会社への製品説明や販売支援情報の提供などをしている。本製品は、従来とは異なる内視鏡操作を必要とすることから、今後の販売量を増やすにはドクターへの製品認知のみならず、使用方法を含めた丁寧な製品説明が必要と考えている。

拡大する低侵襲治療と弊社の可能性

今後も医療機器の進化とともに低侵襲治療は世界各地で発展する。これまでは、ドクターが既製品の操作技術を高度化することで発展してきたが、技量がさほど高くない国において普及させるためには、手技を容易にする新たな機器が不可欠である。世界標準的な手技を機器と共に開発することで、低侵襲治療は世界的に普及し、そこにビジネスチャンスが生まれると考えている。
弊社は中小企業であり、大手が取り組めないニッチで小規模な市場であっても取り組むことができる。小回りの利く中小企業の良さを生かして、ドクターニーズにマッチした特徴のある機器を開発することで、医療技術の発展に貢献できると信じている。

Vol.10 No.4 2014 産学官連携ジャーナルより抜粋